影山 進治のストーリー
私の仕事への想い、そこに至るまでのいろんな出会い。
第三者目線の「人生ストーリー」として紡いでいただきました。

戦略性を味方に 幅広い経験から人を輝かせるサポートを

数分話しただけで、頭の回転が異様に速いと分かる人と出会うことがある。そのような人は、相手が話すと同時に脳内のいろんな情報を呼び起こし、瞬時に言葉にできる。かげさんこと影山進治さんもそのような人のひとりだ。

問いに対しての返答が何とも速く、途切れることなく話し続けられるかげさんは、それだけでなく、最適な言葉を選びとり、しかも感じよく話すことができる。絵に描いたような「仕事ができる人」なのだ。

大学卒業後、さまざまな業種・職種を経験し、それぞれのエッセンスを習得していったかげさんは、2022年1月に会社員として勤務する傍ら「紡」という屋号で開業届を出した。同年12月に、妻の梨那さんが代表を務める株式会社Color Brandingの戦略プランナーに就任。2023年2月に会社員を卒業し、一気に同社を前進させるためのアクセルを踏んだ。 スピーディーかつ慎重―初めて会ったときに感じたかげさんの第一印象は、じっくりと人生のストーリーを聞いた後も、変わらない。ぱっと決断しているように見えるが、感覚で決めているのではなく、人より何倍もの速さで考えつくし、決めているのだ。

どう戦っていくか

かげさんは戦略プランナーという肩書通り、戦略を練ることが好きで得意だ。仕事のうえでも、長年やってきたサッカーやアメフトでも、そして生き方としてもそうだ。

幼稚園から高校まで続けていたサッカーでは「身体能力が秀でているわけでも、テクニックが抜きんでているわけでもなかったから、いかに頭を使って動くか、を考えてずっとやってきた」というし、高校生の頃、自分がけがをしているときには下級生の練習メニューを考案するというかたちでチームに貢献したそうだ。

その後、大学生から始めることになるアメフトに興味を持ったのも、「戦略に沿って試合を進めていくところが面白い」と感じたからだった。

自分が何かで「他の人に敵わない」と感じたとき、そこで心折れたり、どうせ自分なんてと腐ってしまったりする人も多いだろう。でも、かげさんは違う。「じゃあ自分ならどうするか」と常に前向きに自分が戦える場所を探すのだ。

「高校を卒業する段階で、正直、サッカーでは限界を感じていました。アメフトだったら、大学から始める人も多いし、自分自身、0から1へ成長するのがすごく好きなんです」

「自分の能力が開花する場所を探す」ことは、まさに戦略的な行為だ。かげさんの特徴は、そこにポジティブさが色濃く伴うところ。決して「諦める」のではなく、よりよい場所へ「移る」。この決断ができるかできないかで、人生の充実度は違ってくるのだろう。限りある人生、「有意義に生きていきたい」という想いが彼の言葉の端々から感じられるのだ。

後悔のない人生を送るために

「後悔しないように生きていく」―かげさんの人生の大きなテーマだ。

東京学芸大学 教育学部(生涯スポーツ専攻)を卒業後、ミズノ株式会社でウォーキングシューズやランニングシューズの商品企画を担当していたかげさんは、その仕事にやりがいを感じていた。にもかかわらず、5年目に退職することを決意。教師をやってみたかった、という悔いを残さないためだ。

英語を喋れるようになりたかった、という悔いを残さないように、ミズノを辞めたタイミングを逃さずセブ島に2カ月間の語学留学を決行。

そこから特別支援学校、大手学習塾、リサーチ業界と仕事を変えるにあたっても、その都度「このまま続けて後悔しないか」を問い続け、新しい仕事にチャレンジしてきた。

そして、妻の梨那さんと一緒にColor Brandingでやり遂げたいことを本腰を入れて整理したタイミングで「これは副業で手伝える規模ではない、全力で応援したい」と思い立ち、そこから1カ月で会社員を辞め、ジョインした。

大学卒業と同時に一度は引退したアメフトも、会社のない土日にゆっくりした時間があると「人生を無駄にしているような気がして」社会人1部リーグのチームに復帰。そこから、仕事とアメフトの二刀流の生活を8年続けた。

こんなにも「後悔しないようにやる」ことに意識が向くのは、何かやらずに後悔した経験があるからか?と尋ねてみると、かげさんはこう答えた。

「後悔した経験はありません。でも思いあたるのは、親が幼い頃から習い事や進路、髪型まで強く干渉してくるタイプだったんです。望んでいなくても強要されることがあり、自分で考えて、自分で決めたいという思いが蓄積されていったのかもしれません」

「子どもが自分で決めることをやめてしまうので、親はなるべく口出ししないようにしましょう」―そんなことが育児書に書かれるような今の世の中で、その逆境をバネに「自分で決められる」環境を渇望する大人へと成長したかげさんは、ずいぶんと頼もしい。

自分で決められることが貴重だったから、その機会を最大限に価値あるものにするために、戦略的思考は不可欠だったのだろう。そして、自らの手で自分の人生を有意義なものにしたいという心意気こそが、後悔しないための日々の行動へと駆り立てるのかもしれない。

すべてはその先にいる「人」のために

かげさんの特徴的なところは、「自分で考え、成長したい」という思いが自己完結せず、常にその先の「人」を見据えているというところだ。自分が提供したものによって、それを受けとった「人」がどう変わっていくかに、いちばんの興味があるのだ。

誰しも、人との関わりなしには生きていけないが、これまで生きてきた人生に周りの人たちとの関わりを色濃く感じる人と、そうではない人に大きく二分されるように感じる。かげさんは、圧倒的に前者だ。

商品企画をしていたときは、営業さんから応援してもらえるなど、数字以外の「人」の部分に大きなやりがいを感じていた。塾の営業をしていたときは、職場の人たちとの勉強会を独自で企画実施していたし、リサーチャーとして定量調査に関わっていたときは、よりクライアントの意図を正確に調査設計に落とし込むために、営業さんと一緒に打ち合わせに同行していた。

「周りを巻き込む」「自分から巻き込まれる」―どんな場であってもそうやってつながる人を増やし、組織で仕事を進めていくのがかげさん流だ。

その源泉は、やはり長く続けてきたサッカーやアメフトという団体競技なのだろうと推察できるが、周りの人たちと力を合わせて進めていく事業のその先にも、「人」の顔が見えているのがかげさんらしい。自分が企画している商品が、誰のどんな課題を解決しているのか、と考えられるようになって仕事がうんと楽しくなったというエピソードが印象深い。

そしてその「人」に対する思いは現在、Color Brandingでの起業家の支援を通じて「人生を後悔せずに歩める人を増やす」というより具体的な理念へと集約されてきた。

「いろいろな職を経験した結果、自分で事業をやることが、自分自身いちばんハッピーだという結論にたどり着きました。それは、決められた“点”を担当するのではなく、幅広い範囲のなかから、お客様が本当に助けを必要とされるフェーズをお手伝いできるから。誰かが輝くのをお手伝いすることにとてもやりがいを感じますし、クライアントの提供するサービスの先に、それを喜んでくれる人が現れると思うとさらに嬉しい」とかげさんは言う。 戦略的思考に優れた人の特徴なのかもしれないが、かげさんは、物事を点ではなく、線でとらえる。時系列もそうだし、今自分がやっていることの意味もそうだ。「今ココ」をどう広げるのか、どういう未来へとつなげていくのか……高い視座から考えるのだ。

一つずつ「経験」を手に入れて

「実際に経験する」ことも、かげさんが大切にしていることだ。教員として働く前に、一度企業に就職しようと思ったのも、海外へ語学留学に行ったのも、この理由からだった。

「これから社会に出ていく生徒たちを育成する立場として、自分が社会を知らないのは説得力がないと思ったし、英語の先生じゃなくて、体育教師である自分がある程度喋れるようになって、“英語は大切”と言うことに意味があると思ったんです」

これまでの「経験」はかげさんの強い武器だ。彼のキャリア変遷を聞いていると、Color Brandingでこれからたくさんの人をハッピーにしていくための戦場に出るために、ひとつずつ、武器を揃えていったかのようだ。

リサーチ、商品企画、マーケティング、営業―「事業として商品やサービスを提供する」際に踏む一通りのステップを、かげさんは、実務担当者として経験してきた。

さらに、アメフトや海外留学で培った、チームをまとめる力、度胸、英語力、多様性を受け入れる度量も、この「武器」に加わる。

梨那さんがお客様と作り上げた「企業理念」に基づいて、それを実際の事業に落とし込んでいくサポートを、たくさんの武器を身に着けたかげさんなら、リアリティを持ってできるのだ。

偶然を必然に

かげさんのキャリアを聞いていて面白いのは、理想の人生を送るために、自分で掴みに行った経験もあるが、一方で「後から振り返ると武器となっていた」経験も多くあるということだ。

当時希望していなかった営業の仕事も「結果的に、価値を伝える営業、自分のマーケティング理論を実践する場になった」し、「キャラ採用」されて初めて携わるようになったリサーチャーとしての業務も、「そこで論理的思考を育むことができ、ビジネス基礎力だったり、さまざまな業界の知見だったりが自分のなかに蓄積された」という。

偶然を必然に変えていくことができるのは、その一つひとつに意味を見出し、意味のあることへと紡いでいける力だ。この力があれば、一見無意味だったりよくないように感じたりする出来事があったとしても、そこから学び、プラスの力へと変えていくことができるのだ。

さまざまな経験がかげさんの糧になっていく中で、妻となる梨那さんと出会い、彼女の夢と、かげさんの夢が重なった。しかしこのストーリーも、偶然ではなく必然となるよう、2人が動いてきた賜物だ。

Color Brandingが掲げるミッション「心の声をカタチにし 目指す未来へ再出発できるようにする」はまさに、再出発の価値を知るふたりだからこそ、たどりついた理念だ。Color Brandingの一員として働くことは、かげさんにとっては、これまでの経験を土台とした再出発だ。後悔しない人生にするためにかげさんが選んだ、Color Brandingで梨那さんを支えていくという道。これからどのように開けていくのか、本人たちにもワクワクしかないようだ。

取材・執筆
ココロツムグ研究所かげいろ 石原智子